<第1回ダイワハウス住宅設計コンペ出展案>
課題 : 21世紀住宅
題名 : Billboard House
本文 :
敷地は新幹線で東京から2時間程の距離にある、愛知県豊橋市の中心市街地からやや離れた住宅地である.
この辺りは、傍を走る新幹線の線路と車道を分離するために道路が掘り下げられている.
そのため擁壁の目立つ起伏にとんだ都市環境が形成されている.
この起伏に着目して敷地探しをしたところ、急に視界が開けて神社の鳥居のみが眼に飛び込んできた.
交通量が多い場所であるにも関わらず、そのことを微塵も感じさせない眺望が広がっていたのである.
この風景に惚れ込んだ私は、この擁壁を含んだ神社の傍にある空き地を対象敷地として選定した.
当然のことながら私は、この眺望を保存できるような建ち方を求めた.
しかしながら、交通量の多い交差点に面する境界を規定することができない.
ミクロコスモス的回答がちらつく中、敷地に何度か足を運んでいるうちに、敷地に広告板が設置されていることに気付いた.
もちろん気付いていなかったわけではないのだが、その騒然とした雰囲気が、広告板の存在を隠していたようにも思う.
特に角地であるこの場所は、視線が集まる格好の場所であるため広告板を設置するには格好の場所であった.
即ち、ある種の必然性のもとにその場に成立しているのである.
そのようなものが今日の都市のリアリティであり、
個人的な興味や憧れを超えたところでの建ち方を模索するきっかけになるように思う.
今日の都市においては、殆どのものがある利害関係を持ってその場に存在している.
美しい眺望を獲得・保存することは当然であるが、ここで扱う広告板のように元来見失われそうな
ものにこそ多くの差異を有しているように思う.
21世紀の都市のリアリティはこのような多様な都市を絡み合う関係性ごと受け入れ、
その中での建ち方を見出すことで獲得されると私は考える.
全面壁に対して穴を穿つかのように全面ガラスに対して壁を配置する.
この広告によって獲得される新たな境界面は都市との距離を曖昧なものとしてくれる
オーナーは家賃(駐車場)収入+広告収入によって利潤を得ることができる.
駐車場に車の居ない昼間は屋上を広場として地域に開放する.
場の脈絡を基に保存される眺望は、時代を超えていつまでも愛し続けられる.