第13回S×L住宅設計競技出展案>

課題 : 「光源氏の家」

題名 : 紫式部の筆から 

キーワード : 形態、平面

スケッチ :


本文 :

光源氏がそうであったように、彼の家もまた、紫式部の筆から生まれた。

紫式部が筆を滑らせた軌跡、物語を書き続けた線は蛇行しながらも一定の方向性を保存しながら伸び、
四十一本の柱を通過したところで途切れる。
この伸びは源氏物語の進行を意味する。

紫式部にとって、源氏物語は生活の一部であっただろう。
彼女の一期一会は内容に色濃く反映されたに違いない。
この柱は源氏物語各帳文章を書いた過程での出会いを表す。
源氏は飽く事の無い光の中で様々な出会いをする。

紫式部は、ボリュームに二面性を持たせた。
何者をも拒むような黒の中には、多彩な色が重ねられた白が広がる。
彼女は源氏を体内に閉じ込めたかったのだろうか。

ここは光源氏の家。
紫式部が生んだこの家には、源氏への彼女の愛が満ち溢れている。

提案 :

光源氏はどのような空間で暮らすのか。
着眼したのは光源氏は紫式部の一つの理想の男性像であったという点でした。
紫式部が生み出した男性には、紫式部が生み出した空間に住まわせたい。
紫式部が残したものの中から何か新しい形態を見出したいと考えました。
その結果、筆を滑らせたような曲線から空間を形成する、曲線の回転体の形態となりました。
これにより、内部空間は1ルームが平面的・断面的に柔らかに文節される空間になっています。

一言 :

平面を形態に強く反映させようとした場合に、回転体のようなナチュラルな造形が効果的なのかも知れないと思いました。
また、今回複数の色の柱を用いることになり、模型での表現には限界があるため、必要に迫られて初めて3D−CADを用いました。
それまで2D−CADもまともに使えなかったのですが、3D−CADには相当な可能性を感じました。